Postconflict third-party affiliation in stumptailed macaques.
(ベニガオザルにおける第三者の争い後のなだめ行動)
Call, J., Aureli, F., & de Waal, D. M.
Animal Behaviour, 2002, 63, 209-216.ベニガオザル(Macaca arctoides)の特徴は、争い後、当事者の間で高いレベルの仲直り行動が見られることである。我々は、争いの当事者ともともとの争いに巻き込まれなかった第三者との間にも、争い後、和解的な接触が起こることを調べた。争い直後と統制条件期間で、10分間ずつの観察を行い、争いの当事者と第三者の間のすべての攻撃的または和解的行動を記録した。第三者を対象とする個体の関係によって、3群に分けた;対象個体自身の血縁者、相手(敵)の血縁者、どちらにも無関係な個体、である。第三者との相互交渉を別々に分析する一方で、和解的な行動も2段階に分けた;(1)毛づくろいをしたり、すわって接触する (2)社会的な性的行動(sociosexual behavior)(生殖器をしらべるなど)。ベニガオザルは争い後と統制条件期間で、第三者との和解的な接触において違いを示した。争いでの加害者は、争いの後で、被害者と比べると、より多く相手方の血縁者から毛づくろいなどを受けており、また自分自身の血縁者からより多くの社会的な性的行動を受けていた。そして、無関係な個体に社会的な性的行動を示すことも多かった。被害者は、争いの後、自分自身の血縁者に毛づくろいしたり、してもらったりすることが、加害者と比べて少なかった。被害者は、自身の血縁者以外のすべての個体からより多くの社会的性的行動を受け、相手の血縁者以外の全ての個体へ、より多くの社会的性的行動を行っていた。この研究では、ベニガオザルにおいて、三者間で、争い後多くの和解的行動が生起することを証明する。また、始めて、被害者が第三者から接触を受けるという、チンパンジーでのみ報告されていた事象も示す。そして、争い後の状況で、異なる和解的な行為を別々に分析する必要性も強調する。そうしなければ、特に被害者に関して、我々が報告した多くの行動は見落とされてしまっていただろう。
(服部)