Paternally inherited HLA alleles are associated with women's choice of male odor.
(父親譲りのHLA対立遺伝子は女性が男性の匂いを選択する際に関係する)
Jacob, S., McClintock, M. K., Zelano, B., & Ober, C.
Nature Genetics, 2002, 30, 175-179.主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)は個体特有の匂いの元であり、動物では個体認識、繁殖相手の選り好み、巣づくり行動、妊娠の選択的妨害などに影響する。このような現象はヒトにおいては研究しにくい。ヒトのMHCである、ヒト白血球抗原(HLA)の遺伝子座はヒトのゲノム内で最も多型性を示し、数百万ものユニークな遺伝子型のコンビネーションを作り出せる。さらに、それ以外のゲノムや文化的慣習によってコードされた背景の匂いの変異が高く、HLAに基づく嗅覚手がかりは低い信号対ノイズ比ではマスクされてしまう。本研究では、女性が異なるMHC遺伝型の匂いを持つ男性から、一つのHLA対立遺伝子の違いを判別することができることを示した。特にこの、匂いを弁別し選択する女性の能力のメカニズムは、母親譲りではなく、父親から譲り受けたHLA対立遺伝子に基づくことが示された。これらの女性には受け継がれなかった親のHLA対立遺伝子は、生活を通じて匂いに晒されてきたにも関わらず、匂いの選択には関係していなかった。これらの結果より、父親譲りのHLAに関係する匂いは、女性の匂いの好みに影響し、社会的手がかりとして働いているだろう。
(森阪)