No.214-1(2002/07/25)

Searching for food in the wild: a nonhuman primate's expectations about invisible displacement.

(野生の食物探索−不可視的移動に関する霊長類の期待−)

Hauser, M. D.
Developmental Science, 2001, 4, 84-93.

準野生アカゲザル(Macaca mulatta)集団に、不可視的移動課題を含む5実験を実施した。本実験の目的は、訓練をしない状態で、物体が視界から消えた時に、個体が自発的に作り上げる期待の内容を調べることであった。ヒト乳児や子どもの実験に倣い、第1実験では箱が1個置かれたテーブルと、地面に置かれた第2の箱を用いた。被験体の視界をさえぎるように、遮蔽用スクリーンがテーブルの前に置かれた。1片の食物が、テーブル上の物体の上方からスクリーンの背後に落とされた。実験者はスクリーンを取り除き、その場を去り、被験体は接近を許された。サルはいつも間違った下の箱を探した。この誤りは、固体性、包含性その他を理解していないからだと解釈できる。またこれは重力バイアス――落下する物体は全て直下にあるいは最低地点まで落下する――のせいだと解釈することもできる。実験2−5は、これらの別解釈を吟味した。その結果、アカゲザルは、生来の下の箱バイアスを持ってはいないこと、上の箱を回避しているのではないこと、場面によっては、箱は食物を包含し、保持できることを理解していることが示された。つまり、例えば、2つの箱が並んで地面に置かれていると、食物がスクリーンの背後を水平に転がるのを見た後、サルは手前の箱を探すのである。これはサルが固体の入れ物に関する不可視的移動課題を解けるということを示している。つまり一方の入れ物から他方の入れ物に物体が移動することはないことを理解している。実験1で見られたアカゲザルの誤りは全ての落下物は直下に、あるいは少なくとも最低地点まで落下するという期待に導かれたものであると結論する。この期待は物理的事物や事象に関する彼らの知識の限界を示している。

(藤田)