Visual search has no memory.
(視覚探索には記憶がない)
Horowitz, T. S., & Wolfe, J. M. (Brigham & Women's Hospital and Harvard Medical School)
Nature, 1998, 394, 575-577.
ヒトは多くの時間をもの探しに費やす。例えば道ばたの交通信号や、サッカーボールや、断層映像の中の乳ガン、という具合だ。これらの課題では、注意を視野内の一つの項目から別の項目へと移動する過程が含まれる。常識からいえば、一旦注意を受けて拒絶された項目は何らかの形で記録され、それらを再検索しないようになっているはずだ。しかしながら、この常識は誤りである。本実験では、ヒトの被験者にLという文字の中からTという文字を探すことを要求した。この探索には視覚的な注意が必要で、通常の場合、1項目あたり20−30msの速度で探索が進む。われわれは、すべての文字を111msごとにランダムに入れ替える条件を設定した。すると、被験者は探索を規則的に続けることができなくなったが、それにもかかわらず、探索の効率は変化しなかった。視覚探索の理論は、いずれも物体が何であったかに関する情報が時間経過とともに蓄積されることを仮定している。それらの理論に従えば、観察者が探索している最中に状況が常時変動する場合には、探索効率が急激に低下するはずである。われわれが示すように、実際には探索効率は低下しない。従って、従来の標準的理論は修正が必要である。
(藤田)