Object-use in free-ranging white-faced
capuchins (Cebus capucinus) in Costa Rica.
(コスタリカにおける野生ノドジロオマキザルの物体使用)
Panger, M. A. (University of California)
American Journal of Physical Anthropology, 1998, 106, 311-321.
チンパンジーとオマキザルは、他のヒト以外の霊長類と比べると、多様かつ高頻度で道具を用いる。オマキザルは飼育下では広く研究されてきたが、彼らの野外での道具使用行動に関するデータは限られている。本研究はオマキザルにおいて複雑な物体操作を系統的に調べた初めての長期野外研究である。本研究の目的は、1)野生オマキザルの道具使用と物体使用のタイプ、頻度、文脈を調べ、2)野生のオマキザルの物体操作行動が、飼育下の個体が示す行動に匹敵するかどうかを裁定することである。コスタリカのパロヴェルデのノドジロオマキザル3群について、1995年2月から1996年1月にかけてデータを収集した。データは個体追跡法とアドリブサンプリング法を用いて収集した。全ての道具使用と物体使用の観察事例を記録した。11ヶ月の研究期間中、道具使用は観察されなかった。物体使用(たたく、こする、てこの使用)は一時間あたり0.19回の頻度で起こり、サルの(活動)時間の1%以下を構成した(年齢層、性別による違いはなかった)。この結果は、野生のオマキザルは飼育下の仲間が見せる広範な道具使用行動を行わないことを示す。このことは、物体への特異な動機付け反応(の欠如)、樹上性の生活、適当な道具の材料の欠如、道具使用による摘出を必要とする食物資源の欠如の結果かもしれない。
(山越)