Seeing biological motion.
(生物学的運動を見る)
Neri, P., Morrone, M. C., & Burr, D. C.
Nature, 1998, 395, 894-896.
ヒトの視覚の情報源の豊かさを示す魅力的な一例は「生物学的運動」を見る能力である。最初、これは初期の映画製作技術の応用で示された。歩いている人の関節点だけに光点をつけるだけで、ヒトの運動の生き生きとした強烈な印象が与えられるのである。歩行者が静止するとこの印象は瓦解し、無意味な光点の集まりになる。この情報は歩行者の性やその他の詳細情報を弁別するのに十分であり、若齢の乳児にもわかる。今回われわれは、視覚系が時空間を通じてこの種の運動情報を統合する能力を測定し、単純な平行移動運動を見る能力と比較した。生物学的運動の感受性は光点の数が増えると急速に上昇した。この上昇は単純な運動よりもずっと急速だった。さらに、この情報は最大3秒の時間間隔まで拡張して積算される。これは単純運動の8倍の長さである。積算カーブの傾きが急勾配になることから、生物学的運動を分析するメカニズムは、他の複雑な動きの処理のように一定の効率で時空間を通してリニアに情報を統合するのではなく、この刺激の性質に適応したものになっていることが示唆される。
(藤田)