No.53-2(1999/01/06)

Mirror neurons and the simulation theory of mind-reading.
(鏡ニューロンと読心のシミュレーション説)

Gallese, V., & Goldman, A.
Trends in Cognitive Sciences, 1998, 2(12), 493-501.

最近サルの運動前野皮質に新しい一群の視覚運動ニューロンが発見された。鏡ニューロン(mirror neuron)である。これらのニューロンは神経活動を記録されているサルがある動作をしたときだけではなく、他個体が同じ動作をするのをそのサルが見たときにも同じように応答する。鏡ニューロンは目標関連的な動作の観察と実行の一致を見つける皮質系であるように思われる。実験的な証拠から、同じような一致検出システムはヒトにも存在することが示唆される。この一致検出システムの機能的な役割は何だろうか?一つの可能性は個体が他個体の心的状態を認識するための機能である。この機能はより汎用性のある読心能力の一部分あるいは前駆体であるかもしれない。読心に関しては2つの異なる説明が提案されている。「理論説(theory theory)」によれば、心的状態は原初理論(naive theory)から推理された仮説として表象される。「シミュレーション説」によれば、他者の心的状態は自身の見地を採用すること、つまり相手の状態を対応する自身の状態に合わせることにより表象される。鏡ニューロンの活動と、相手個体が使うのと同じ筋群に運動的な促進が生じることは、シミュレーション説にはよく合うが理論説からは予測されない。

(藤田)