No.57-2(1999/02/10)

Behavioural visual acuity of wild type and bcl2 transgenic mouse.
(行動的測定法による野生型マウスとbcl2形質転換マウスの視力)

Gianfranceschi, L., Fiorentini, A., & Maffei, L.
Vision Research, 1999, 39, 569-574.

遺伝子操作法の普及によりマウスの神経の機能的特性を研究することが非常に重要になっている。bcl2遺伝子は自然な細胞死を強く抑制する働きをする。その結果、bcl2遺伝子が過剰に発現したマウスでは脳が野生型のマウスの1.5倍の大きさをもち、網膜の神経節細胞の数は通常の2倍になる(Marutinouら, 1994, Neuron, 13, 1017-1030)。多くの哺乳類では行動的方法によって測定された視力の上限は神経節細胞の密度によって決まっていることから、bcl2マウスの視力は野生型よりも優れているものと考えられる。われわれが野生型と形質転換マウスの視力を測定した結果は予期に反し、それぞれのグループでほぼ同じ(0.5-0.7 c/deg)であることが分かった。この結果は神経節細胞の密度の増大は視力の向上には効果をもたないことを示唆している。

(山下)