No.75-2(1999/06/24)

Social learning in common ravens,Corvus corax.
(カラスの社会学習)

Fritz, J. & Kotrschal, K.
Animal Behaviour, 1999, 57, 785-793.

カラスが同種のモデルを基に運動課題を獲得するかどうか調べた。まず、コントロール条件のカラスのペア、あるいはモデルー観察者のペアを用意し、それぞれのカラスが操作できる箱を一緒に鳥小屋に入れた。この箱にはそれぞれに3切れずつ肉の入った小箱に分けられていた。小箱には手前に赤いべろのついたふたがついていて、そのべろを水平に滑らせるとふたが開いた。ナイーブなコントロール個体は、箱の上に飛び乗りふたの後端にくちばしをこじ入れふたを押し開ける、てこの原理を使ってふたを開けた。モデルカラスは、べろを引っ張って箱を開けてから、箱の上に飛び乗って餌を手に入れる、もうひとつの開け方を教えられた。このモデルをみた観察者はコントロールのカラスとは違って、最初から、「引っ張り」と「こじ開け」の2つのやり方を使った。また、観察者はコントロールカラスより箱に近づくまでの時間が短く、恐怖を示す行動も少なかった。これはモデルの強調効果であると考えられる。この行動について、運動模倣と刺激強調の2つの考え得る学習機構から議論した。また、観察者は最初からモデルが開けた箱からいくらかの報酬を得ていたが、たかりが学習を阻害しないことは明らかである。

(石川)