Vocal recognition in the spotted
hyaena and its possible implications regarding the evolution of intelligence.
(ブチハイエナの音声認識と知能の進化についての可能な説明)
Holekamp, K. E., Boydston, E. E., Szykman, M., Graham, I., Nutt, K. J., Birch, S., Piskiel, A., & Singh, M.
Animal Behaviour, 1998, 58, 383-395.
ブチハイエナ(Crocuta crocuta)は群居性の食肉類であり、オナガザル科の霊長類とよく似た社会的生活を送っている。まず野性下のブチハイエナが、'whoop'と呼ばれる遠距離伝達音声を用いて同種個体の同定をおこなえるか、音声の再生実験をおこなった。前もって録音された幼獣の'whoop'音声が、その幼獣の母親や子育て中の母親(統制群)に対して再生されると統制群の個体よりも強く反応した。次に、この種において音声認識能力が近縁関係に基づいているかどうか、という仮説を検証した。すると、'whoop'音声をだした幼獣と近縁関係にある個体は、そうでない個体よりも強く反応し、いくつかの事例では近縁係数(r)の大きさによって増加した。この研究の最後の目的は、以前ベルベットモンキー(Cercopithecus aethiops)に対しこの実験同様の再生実験をおこなったときに見られた同一群れ内の第3者関係の認識を、ブチハイエナの統制個体が見せるかどうかの検討であった。結果はベルベットモンキーとは異なり、統制個体が'whoop'音声の再生後、その音声を発した幼獣の母親を他のメスよりよく見る、という事実は観察されなかった。この結果は、第3者関係の認識の能力を除いて、ブチハイエナがベルベットモンキーと同じような社会的能力を身につけていることを示している。ブチハイエナにおいて他の社会的側面も確かめられと、知能の進化に有利な選択圧という問題に、われわれの発見は大きく関与する。
(石川)