Goal attribution without agency cues: the perception of 'pure reason' in infancy.
(作用者手がかりがない時の目標指向性の認識:乳児における「純粋な理由」の認知)
Csibra, G., Gergely, G., Biro, S., Koos, O., & Brockbank, M.
Cognition, 1999, 72, 237-267.
素朴心理学的推論の本来の対象領域は、人の動作と人の心的状態だが、そういった推論は人以外の現象に対しても適用されることが多い。この傾向が生じるのは、素朴心理学的推論が、最初は作用者(agents)の自発的な動きの認識に限定され、かつそれによって引き起こされるものだからであると広く信じられている。本論文の目的はその説の妥当性を調べることである。3つの馴化法による実験をおこない、乳児が心理学的原理(つまり合理的動作rational actionの原理)を呼び出して、行動を目標指向的行為であると解釈するための必要条件を調べた。実験1では、6ヶ月児では合理的動作の原理が作動していないが、9ヶ月児では作動していることを明らかにした。実験2では、自己推進といった作用者を示す知覚的手がかりは、行動を合理的動作の原理から解釈するための必要条件ではないことを示した。実験3では、この効果は、作用者的特性が1つの対象から別の対象へと般化するために生じるのではないことを確認した。これらの結果から示唆されることは、素朴心理学の領域が、初期にはその中核的原理の適用可能性だけによって決められており、素朴心理学は、人、動物、作用者といった、(特徴によって同定される)ものの種類に限定されて存在するものではない、ということである。素朴心理学的推論は、初期状態では手がかりに基づく理論なのではなく、原理に基づく理論なのであるとわれわれは考える。